誘拐・略取(未成年拐取・営利目的拐取)について

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誘拐・略取(未成年拐取・営利目的拐取)について

誘拐・略取(未成年拐取・営利目的拐取)について

未成年拐取

人を略取若しくは誘拐する行為のうち、未成年者に対するもの、又は身代金、国外移送、営利、わいせつ、結婚若しくは生命身体への加害の目的で行うもの、等について、刑法224条から229条で犯罪として定められています。


誘拐と略取をあわせて「拐取」と呼びます。

略取とは
略取とは、暴行または脅迫を手段として、
人を生活環境から不法に離脱させ、
自己または第三者の事実的・実力的支配化におくことです。
誘拐とは
誘拐とは、欺罔または誘惑を手段として、
人を生活環境から不法に離脱させ、
自己または第三者の事実的・実力的支配化におくことです。

略取・誘拐、および被略取者引渡し等の罪は、いずれも未遂の場合も処罰されます(刑法第228条)。

なお、不法に人を略取・拉致する等した場合、または監禁した場合には、逮捕・監禁罪(刑法第220条)となります。

また、人を逮捕・監禁した上、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為を強要するなどした場合、「人質による強要行為等の処罰に関する法律」が制定されています。




未成年者略取罪・未成年者誘拐罪

未成年者略取罪と未成年者誘拐罪は、いずれも刑法224条で規定されており、刑事罰は、いずれも同じで「3月以上7年以下の懲役」となります。

刑法 第224条(未成年者略取及び誘拐) 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

本罪に定める未成年者とは、20歳未満の者のことをいいます。
本罪は親告罪です(刑法229条)。

成人の場合には、営利目的や人質目的等のみ処罰を定めているのに対し、未成年者の場合には、目的の如何にかかわらず処罰が定められています。
未成年者本人の承諾があっても、違法性は阻却されません。

「未成年者略取罪・未成年者誘拐罪」の保護法益は、未成年者の自由のみならず、保護者の監護権も含まれます(大判 明治43年9月30)。

必ずしも未成年者自身に対して加えられる場合に限らず、その保護監督者に対して加えられても適用されます(大判 大正13年6月19日)。

略取および誘拐は、未成年者を場所的に移転させることを要するとしています(大判 大正12年12月3日)。
未成年者が自らの意思で出向いた場合には、略取や誘拐は成立しません。




営利目的等略取及び誘拐罪(刑法225条)

営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した場合については刑法225条で規定されており、刑事罰は「1年以上10年以下の懲役」となります。

刑法 第225条(営利目的等略取及び誘拐) 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

1)営利の目的
たこ部屋で働かせて利益を得る目的
誘拐行為により第三者から報酬を受け取る目的、等
2)わいせつの目的
強姦や強制わいせつ等の姦淫する目的
性風俗関係のサービスに就業させる目的、等
3)結婚の目的
戸籍上の夫婦になる目的
事実婚(内縁関係)の目的、等
4)生命・身体に対する加害の目的
殺害、傷害、または暴行を加える目的
臓器摘出の目的、人身売買の目的、等


営利目的とは、みずから財産上の利益を得、または第三者に得させる目的をいいます。
取得すべき利益は、不法なものであることは要しません。
一時的に利益を得る目的でもよく、必ずしも継続的に利益を得る目的であることは要しません(大判大9・3・31)。

借金を弁済させる目的で売春業務に従事させる場合も、これに該当します(大判大正14・1・28)。
必ずしも拐取行為自体によって利得する場合に限らず、拐取後の行為によって利得しようとする場合も含まれます(大判昭和2・6・16)。
また、拐取者自身の負担によって利益を得ようとする場合のほか、拐取行為に対する第三者からの報酬を得る目的でも成立します(最決昭和37・11・21)

東京高等裁判所 昭和31年9月27日 判決
「未成年者に対する誘拐行為であっても、それが営利の目的に出たものであるときは、刑法第224条を適用すべきではなく、同法第225条によって処断すべきことは右各法条の文理上明らかであるのみならず、その立法趣旨に照らしてもまた疑を容れる余地がないから、本件の被害者は未成年者ではあるが、もし被告人に営利の目的があったならば、その所為は単なる未成年誘拐罪ではなく、刑法第225条所定の営利誘拐罪が成立するものといわなければならないのである。」

わいせつ目的とは、強姦や強制わいせつ等の姦淫の目的がある場合です。

なお、わいせつの対象が18歳未満の場合、各都道府県の「青少年育成条例」で定める「みだらな性行為」としても処罰される可能性があります。
また、わいせつの対象が13歳未満の場合には、本人の同意があろうとも、強制性交罪等でも処罰される可能性があります。




配偶者間の養育等を巡る略取及び誘拐

夫婦間のトラブルにより、片方の親の同意なく子どもを連れ去る等の問題については、平成17年に最高裁判所で有罪判決を下された事例があります。

平成17年12月6日 最高裁判所決定「未成年略取被告事件」
●事案概要
被告人は,すでに離婚訴訟係争中であった妻が養育している長男(当時2歳)を連れ去ることを企て,保育園に迎えに来た妻の母が自動車に乗せる準備をしているすきをついて,背後から長男を持ち上げ,あらかじめエンジンをかけておいた自分の自動車まで全力疾走し,長男を抱えたまま運転席に乗り込み,妻の母が同車の運転席の外側に立ってドアを開けようとしたり,窓ガラスを手でたたいて制止したりするのも意に介さず,自車を発進させて走り去り,長男を自分の支配下に置いた。
●判決要旨
本件において,被告人は,離婚係争中の他方親権者である妻の下から長男を奪取して自分の手元に置こうとしたものであって,そのような行動に出ることにつき,長男の監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから,その行為は、親権者によるものであるとしても、正当なものということはできない。
また,本件の行為態様が粗暴で強引なものであること,長男が自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること,その年齢上,常時監護養育が必要とされるのに,略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると、家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。
以上によれば,本件行為につき,違法性が阻却されるべき事情は認められないのであり,未成年者略取罪の成立を認めた原判断は、正当である。

また、この種事案は、国会でも度々取り上げられており、警察庁から各都道府県警本部等に対して事務連絡も出されております。

警察庁事務連絡/配偶者間における子の養育等を巡る事案に対する適切な対応について

なお、事務連絡とは、通達とは異なり、実務上の法令運用に関わらない「お知らせ」ないし「お願い」という意味合いになります。

通達 通達とは、行政官庁が法令運用に関わる所掌事務について、所管の機関や職員に対して指示命令として文書で通知することをいいます。
事務連絡 事務連絡とは、法令運用に直接関わらないが,周辺の細々したことを知らせたりお願いすることをいいます。




事務所概要