脅迫・恐喝・強要

Site map

メニュー

脅迫・恐喝・強要

脅迫とは

脅迫とは、相手方に恐怖心を生じさせる目的で、相手方又はその親族の生命、財産、身体、名誉、自由などに対して害悪を加える旨を告知することをいいます。

法定刑は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。


刑法222条(脅迫)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。


■「害悪の告知」の方法
害悪の告知方法は、口頭での発言や文書、電話、メールなどの文言の他、態度・動作の場合であっても、また、第三者を介する等の間接的な方法であっても、成立します。

例:
・威迫する発言
 「お前を殺してやる」
 「家族を痛い目にあわせるぞ」
 「自宅に火をつけてやる」
 「子どもがどうなっても知らないぞ」
 「勤務先に不正をばらしてやる」
・殴るそぶりをする
・帰らせないように前に立ちはだかる
など

大判大正13年11月26日刑集3巻831頁
集落においてある住民に対して絶交の決議をし(いわゆる村八分)、被絶交者がその決議を知った場合に脅迫罪が成立する。


「害悪の告知」の内容
一般人が畏怖するに足りる者であれば成立し、「殺す」「痛い目に遭わせる」「●●にばらす」などの犯罪行為に限られません。
「お前の不正を告発するぞ」と告げた場合、それが権利の表明や真実の追究ではなく、告発する意思が無く、もしくは告発することが不可能であると知りながら、単に畏怖させることが目的であれば、脅迫罪が成立します。

大審院大正3年12月1日判決
告訴の意思が不確定であるのに、ことさらに告訴すべきことを通知するのは害悪の告知に他ならない。

「一般人が畏怖するに足りるもの」を告知することよって成立するため、実際に恐怖心を感じるかどうかは問われません。



「害悪の告知」の対象
「害悪の告知」の対象は、「本人又はその親族」であるため、配偶者や親兄弟へ害悪を加える旨を告げた場合でも成立しますが、恋人や友人・同僚などに対して害悪を加える旨を告げた場合には成立しません。

脅迫罪における保護法益は、個人の「意思決定の自由」や「生活の平穏」であるため、通説および判例上、法人に対する脅迫罪は成立しないと解されています。
ただし、その代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉または財産に対する加害の告知にあたると評価され得る場合には、その自然人に対する同罪が成立するものと解されています。
・大阪高裁 昭和61年12月16日 判決
・高松高裁 平成 8年 1月25日 判決


「脅迫罪」は親族間窃盗例の対象外であるため、親子間や兄弟間などの親族間の場合であっても成立しますし、告訴がなくても起訴可能であり、告訴期間の制限もありません。



脅迫をもちいて金品を略取(強取)する場合は、恐喝罪または強盗罪が成立となります。
また、脅迫を用いて、他人に義務のないことを行わせたり、他人の権利の行使を妨害すると強要罪が成立となります。
よって、これらの場合は「脅迫罪」になりません。




恐喝とは

恐喝とは、害を加える旨を告知して脅し、または暴行をすることによって、財物の交付を受けたり、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させることをいいます。

法定刑は、10年以下の懲役です。


刑法249条(恐喝)
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法250条(未遂罪)
この章の罪の未遂は、罰する。

恐喝罪の保護法益については、被害者の財産と、被害者の意思決定や行動の自由です。
相手方を畏怖させるような害悪の告知であれば、脅迫罪の場合の「相手方又はその親族の生命、財産、身体、名誉、自由」に限定されません。
方法は、脅迫による場合のみならず、暴行による場合でも成立します。
ただし、被害者の意思に反して占有を移転させた場合は、強盗罪になります。


親族間の場合の特例(親族窃盗例)
配偶者、直系血族又は同居の親族との間の恐喝罪は、刑が免除されます。
また「配偶者、直系血族又は同居の親族」以外の親族との間の恐喝罪は、告訴がなければ起訴することが出来ません(親告罪)
ただし、親族でない共犯については刑が免除されず、告訴が無くても起訴することが出来ます。


刑法255条(準用)
第242条、第244条及び第245条の規定は、この章の罪について準用する。
刑法244条(親族間の犯罪に関する特例)
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。



強要とは

強要とは、相手方又はその親族の生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対して害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行をすることによって、人に義務のないことを行なわせたり、権利の行使を妨害したりすることをいいます。

暴行は、殴る蹴るなどの行為の他、腕を掴んだり、集団で周りを取り囲んだりする行為も含まれます。

脅迫は「殺すぞ」「痛い目に遭わせるぞ」「ばらすぞ」などの害悪の告知によって畏怖させる行為をいいます。

法定刑は、3年以下の懲役です。


刑法223条(強要)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前2項の罪の未遂は、罰する。

強要の保護法益は被害者の意思決定と行動(意思活動)の自由です。

親子間や兄弟間など、親族に対する暴行を用いて、他人に義務のないことを行わせた場合、法文上は強要罪になりませんが、親族に対して暴行を加えることが、相手方に対する脅迫となることが多く、そのような場合であれば、親族間の場合であっても成立します。

「害悪の告知」の対象となるのは、脅迫罪の場合と同様、本人または親族のみであり、相手の恋人や友人・同僚などに対して害悪を加える旨を告げても、強要罪にはあたりません。
ただし、「害悪の告知」がなくても、暴行による場合でも、強要罪は成立します。


【強要罪の具体的事例】
無理やり契約書へ署名押印させる
周りを取り囲んで謝罪文を書かせる
店員にクレームを付けて土下座を強要する
質問への回答を無理強いする
解雇か一身上の都合での退職を選べと選択を迫り、退職願を書かせる



威力をもちいて人の業務を妨害した場合は、威力業務妨害罪が成立となります。

また、刃物などの凶器を突きつけて要求した場合は、脅迫罪が成立となります。


公務員がその一般的な職務権限に属する事項につき、職権の行使に仮託して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、公務員職権濫用罪となります。

刑法193条(公務員職権濫用罪)
公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。




事務所概要