窃盗(盗難)

Site map

メニュー

窃盗・強盗

窃盗とは

窃盗罪とは、他人の占有する財物を、暴行・脅迫の手段によらず、占有者の意思に反して窃取することによって成立する犯罪のことをいいます。


法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。


刑法235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃取の対象となる財物とは、有形の財物の他、気体や液体、さらに、電気も含まれます。

刑法245条(電気)
この章の罪については、電気は、財物とみなす。

窃盗罪の構成要件

窃盗罪となるには、以下の構成要件を全て満たしていることが必要です。

    窃盗罪の構成要件
  1. 他人の占有下にある財物を窃取したこと
  2. 不法領得の意思のもと行われたこと
  3. 窃取の事実があること


窃盗罪の保護法益は、所有権その他の権利に基づいた占有の権利でありますので、窃盗罪の対象となる目的物は、所有物の他、他人から借りたものや預かったものも「占有下にある財物」に該当します。

「不法領得の意思」とは、他人の物だと知りながら自分の物にしようという意思です。
自分の物だと勘違いして持っていった場合や一時的に借りて返すつもりだった場合は該当しません。

実際に「窃取の事実」があることが必要ですが、未遂でも処罰の対象となります(刑法243条 未遂罪)。


被害者の目を盗んで無断で窃取した場合の他、万引き置き引き、スリ、空き巣、ひったくり、自転車泥棒、下着泥棒、車上荒らし、なども、すべて「窃盗罪」になります。


占有離脱物横領罪とは

仮に所有物であっても、財物が被害者の占有を離れていた場合には占有離脱物横領罪となります。

法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。


犯人が犯行当時に、当該物の占有権を有していないことが窃盗罪の要件であり、犯人が委託を受けて占有を有していたという場合には、横領罪(刑法第252条)や業務上横領罪(刑法第253条)の成立を検討することになります。




不動産侵奪罪

窃盗罪の客体は財物=動産ですが、不動産侵奪罪とは、不動産の正当な権利者の占有を排除して事実的な支配をすることをいいます。

法定刑は、10年以下の懲役です。


刑法第235条の2(不動産侵奪)
他人の不動産を侵奪した者は、10年以下の懲役に処する。

不動産とは、土地及びその定着物のことをいいます。

民法 第86条1項(不動産及び動産)
土地及びその定着物は、不動産とする。

土地とは、土地の表面、および、土地の上空や地下も含みます。

民法第207条(土地所有権の範囲)
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。

ただし、建築基準法等や都市計画法、隣接する土地との建築協定などによる制限を受けたり、土地収用など公共のために用いられることがあります。

日本国憲法第29条3項
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

「侵奪」とは、他人の占有を排除して自己または第三者の占有を設定することであり、動産における「窃取」に対応する概念です。

侵奪といえるためには、不動産に対する「事実的な支配」の侵害が必要です。

なお、不動産侵奪罪は未遂も処罰の対象になります。

刑法第243条(未遂罪)
第235条から第236条まで、第238条から第240条まで及び第241条第三項の罪の未遂は、罰する。

「他人の不動産」は、自己の所有する不動産であっても、他人が占有するものであるとき、公務所の命令により他人が看守するものであるとき、等は「他人の不動産」とみなされます。

刑法第242条(他人の占有等に係る自己の財物)
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。

■不動産侵奪罪と認定された事例

  1. 無断で他人所有の土地を掘削し、土砂を投棄した(大阪高裁 昭和58年8月26日)
  2. 勝手に造成し建造物を建てる行為(福岡高裁 昭和62年12月8日)
  3. マンションの1室について立入禁止の貼紙+出入口ドアの錠前の交換(大阪高裁 平成11年8月27日)
  4. 事実上廃業状態となっていた工務店が所有していた土地の利用権を有する者が廃棄物を高さ約13メートル堆積させ、原状回復を困難にした=土地の利用価値を喪失させた(最高裁 平成11年12月9日)
  5. 東京都の公園予定地の一部に無権原で簡易建物を建築し退去要求に応じなかった(最高裁 平成12年12月15日)
  6. 土地所有者から『転貸禁止,屋台営業のみ可』という約定で土地を無償で借り受けなら無断で転貸を行い、転借者が無断で8個の個室を作り、造作して風俗営業のための店舗を作り、原状回復を困難にした(最高裁 平成12年12月15日)


一時利用の目的であって原状回復が容易であり、損害も皆無に等しい場合は侵奪に当たらないとされています(大阪高裁 昭和40年12月17日)。
虚偽の申請による登記名義の不正取得などは、私文書偽造罪や公正証書不実記載罪を検討することになります。
山林の立木を伐採するなど、不動産の一部を分離して領得した場合は、対象物は動産となっているので窃盗罪になります(最高裁 昭和25年4月13日)。




強盗とは

強盗罪とは、暴行または脅迫をもって、他人の占有する財物を強取すること、または行為者(又は第三者)の財産場不法の利益を得させるによって成立する犯罪のことをいいます。


法定刑は、5年以上の有期懲役です。


刑法236条(強盗)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

1項の「強取した場合」を「一項強盗罪」、2項の場合を「強盗利得罪」といいます。

例えば、タクシーを利用して支払いを請求された際に、暴行または脅迫を用いて代金の支払いを免れた場合等が「強盗利得罪」となります。


窃盗罪の実行に着手した者が、不法に得た財物を取り返されるのを防ぐため、又は逮捕を免れるため、もしくは犯人・犯行特定の証拠を隠蔽するために、その抵抗を制圧するに足りる暴行又は脅迫を加えると事後強盗(刑法第238条)となります。

暴行・脅迫によらず、他人を昏睡させて抵抗不能の状態にすることにより、他人の意思に反して、その占有する財物を盗取すると昏睡強盗(刑法第239条)となります。


刑法237条(強盗予備)
強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。
刑法238条(事後強盗)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
刑法239条(昏睡強盗)
人を昏こん酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。



親族間の犯罪に関する特例

親族間で発生した一部の犯罪行為またはその未遂罪については、その刑罰を免除(刑法244条1項)、または親告罪(刑法244条2項)とする特例があります。
親族相盗例といいます。


以下の犯罪行為とその未遂罪について、配偶者・直系血族・同居の親族の場合には、刑法第244条第1項により刑が免除されます。
その他の親族の間における犯罪行為とその未遂罪については、刑法第244条第2項により親告罪となります。

  1. 窃盗罪(235条)
  2. 不動産侵奪罪(235条の2)
  3. 詐欺罪(246条)
  4. 電子計算機使用詐欺罪(246条の2)
  5. 背任罪(247条)
  6. 準詐欺罪(248条)
  7. 恐喝罪(249条)
  8. 横領罪(252条)
  9. 業務上横領罪(253条)
  10. 遺失物等横領罪 (254条)
  11. ※脅迫罪や強要罪、暴行罪や傷害罪、強盗罪、器物損壊罪、等には本条の適用がありません。


刑法244条(親族間の犯罪に関する特例)
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

この特例の存在理由としては、ローマ法の法諺である「法は家庭に入らず」の思想や、儒教的家庭観への、立法者の政策的配慮が大きく働いていると考えられています。


この特例が適用されるためには、目的物の所有者・占有者双方と行為者との間に「親族関係」が必要となります
(最高裁 平成6年7月19日 決定)


被害が親族でない第三者に及んだ場合には、その第三者(被害者)に対する犯罪行為は成立します。
また、親族でない共犯者には適用されず、その共犯者(第三者)の犯罪行為は処罰されます(刑法244条3項)。


母親の死によって生命保険の受取人となった未成年者の預金を、家庭裁判所から後見人に任じられた実の祖母(直系血族)と伯父夫婦(同居の親族)が横領するという事件につき、最高裁は、「未成年後見人は家庭裁判所から選任される公的性格を有するものであるから親族相盗例の適用はない」と判断しました。
(最高裁 平成20年2月18日 決定)。


事実婚(内縁)の配偶者が、親族相盗例における配偶者にあたるかという問題につき、最高裁は「免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があることなどからして、内縁の配偶者に適用または類推適用されることはないと解するのが相当」として、事実婚の配偶者による窃盗には、親族相盗例を適用しないと判断しました。
(最高裁 平成18年8月30日 決定)。


「親族相盗例」類似の親族間の特例規定

(1)犯人隠匿罪・証拠隠滅罪
犯人・逃走者の親族が犯人の刑事法上の利益のために犯人隠匿罪・証拠隠滅罪を犯した場合に、刑罰を免除することができる(刑法第105条)。


(2)盗品譲受け等
配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で、盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって得たものを譲り受けた場合や、運搬、保管、又はその有償の処分のあっせんをした者は、刑罰が免除されます(刑法第257条)。





事務所概要